脂肪萎縮症について

脂肪萎縮症とは

監修:中尾一和先生
京都大学名誉教授
京都大学医学研究科 メディカルイノベーションセンター

脂肪萎縮症とは、全身あるいは部分的に脂肪組織が少なくなったり、ほとんどなくなってしまったりする病気です。

近年、病因の異なる脂肪萎縮症をまとめて「脂肪萎縮症候群」と呼ぶことが提唱されています。

脂肪組織からは、身体の働きを調整するいくつかのホルモン(アディポカインと総称される)が分泌されています。
全身性脂肪萎縮症では脂肪組織がほとんどなくなってしまうために、これらの分泌も減ってしまいます。中でも、糖や脂質の代謝(体内で分解・処理し、エネルギー化すること)に重要な役割を果たしているレプチンというホルモンが著しく減ってしまいます。そのため、糖や脂肪の代謝異常が起こり、糖尿病、高トリグリセリド(中性脂肪)血症、脂肪肝などの病気にかかりやすくなるのです。

部分性脂肪萎縮症では、左右対称性に四肢の脂肪萎縮と顔面と体幹部の肥満が混在します。全身性脂肪萎縮症はレプチンの絶対的不足の病態であり、部分性脂肪萎縮症は相対的不足の病態である証拠が蓄積されて来ています。

おもに遺伝性とされる先天性と、自己免疫、感染、薬剤等の影響が知られている後天性とがありますが、その詳細や発症のメカニズムについては、明らかになっていないことが少なくない病気です。

全身性脂肪萎縮症の発症は100万人に1人程度と、極めて稀な病気ですが部分性脂肪萎縮症は、その後の研究により、患者数の増加が指摘されています(日本内分泌学会 脂肪萎縮症診療ガイドライン)。
2015年に、両疾患共に難病医療費助成制度の対象疾患に指定されました(指定難病)。

レプチンの働きは、食欲の抑制、インスリンの作用を高めるなど、糖や脂質の代謝をつかさどることです。