脂肪萎縮症について
脂肪萎縮症の種類と原因
監修:中尾一和先生
京都大学名誉教授
京都大学医学研究科 メディカルイノベーションセンター
京都大学名誉教授
京都大学医学研究科 メディカルイノベーションセンター
脂肪萎縮症は、全身の脂肪組織が減少あるいは消失する「全身性」と、左右対称性に四肢などに部分的にそれが起こる「部分性」、限られた狭い範囲のみ起こる「限局性」に分類されます。このうち「限局性」は、一般的に外見上の問題(脂肪組織の少ない部分の見た目が良くないなど)にとどまり、代謝異常による病気の発症には至りません。
「全身性」と「部分性」では、脂肪組織から分泌されるホルモンであるレプチンが絶対的あるいは相対的に欠乏するために、糖や脂質の代謝が悪くなり、糖尿病、高トリグリセリド(中性脂肪)血症、脂肪肝などの病気にかかりやすくなります。治療が行われない場合の平均寿命は30~40歳と言われ、予後は思わしくありません。
「全身性」「部分性」ともに、生まれたときに認められる「先天性」と、生まれた後に発症する「後天性」とがあります。先天性脂肪萎縮症は遺伝性のものが大部分を占め、後天性脂肪萎縮症は自己免疫、感染、薬剤等の原因が知られています。
全身性脂肪萎縮症の多くは乳幼児期~小児期に発症するとされ、国内での患者数は100万人に1人程度です。
なお、食事制限(ダイエット)や過度の運動をして「やせる」ことは、脂肪萎縮症ではありません。脂肪萎縮症では一般的に食欲は亢進し、糖尿病や高中性脂肪血症などを発症し診断されます。
部分性脂肪萎縮症は小児期にも発症しますが、多くは成年期 特に中年期に発症します。研究の進展により、患者数は増加しています。
脂肪萎縮症の分類
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全身性脂肪萎縮症全身の脂肪組織が少なくなったり、ほとんどなくなったりする病気
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部分性脂肪萎縮症四肢など左右対称性に部分的に脂肪組織が少なくなったり、ほとんどなくなったりする病気
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限局性脂肪萎縮(症)狭い範囲に限局して、脂肪組織が少なくなったり、
ほとんどなくなったりする病態 左右は非対称
脂肪萎縮症が引き起こす病気
脂肪萎縮症
先天性脂肪萎縮症
生下時から認められ遺伝性のものが大部分を占める
後天性脂肪萎縮症
生下時は異常はなく、遺伝性、自己免疫、薬剤等の原因が知られている
全身的あるいは部分的に脂肪組織が減少したり、ほとんどなくなる
脂肪組織から分泌される
レプチンが減る
(レプチンのはたらきが不足する)
糖や脂質の代謝が悪くなる
糖尿病、高トリグリセリド(中性脂肪)血症、脂肪肝など